きのこは、急がない
2026年9月12日(土)のコラム
きのこを炒めるとき、ついやってしまいがちなのが、菜箸でせわしなく動かしてしまうこと。実はこれ、おいしさを逃してしまう、もったいない癖なのです。
コツは、最初は「触らない」こと。熱したフライパンにきのこを広げたら、しばらくじっと我慢します。動かしたくなる気持ちをぐっとこらえて待つと、やがて香ばしい焼き色がつき、きのこの旨みがぎゅっと凝縮されていきます。早く動かしすぎると、水分ばかりが出てべちゃっとしてしまうので、この「待つ時間」こそが、おいしさの分かれ道になります。
きのこは、種類を組み合わせるのも楽しいもの。歯ごたえのあるエリンギ、香り高いまいたけ、くせがなくて使いやすいしめじ。数種類を一緒に炒めれば、香りも食感も奥行きが生まれ、それだけで立派なごちそうになります。仕上げにバターをひとかけ、しょうゆをひとたらし。じゅっと立ちのぼる湯気と香りに、きっとお腹が鳴るはずです。
きのこは一年を通して手に入りますが、本来の旬は秋。気温が下がってくると、香りもいっそう深くなります。せわしない毎日だからこそ、フライパンの前で、ほんの少しだけ手を止めて待つ。そんなささやかな時間が、いつもの料理を、ちょっとしたごちそうに変えてくれます。